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『第五話 父と子と』より
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レコア |
「誰のせいでもないわ。
あそこはデバサイだったのよ。」
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カミーユ |
「僕は、父からアガろうとしたんです。」
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クワトロ |
「君がアガらなくても、いずれ誰かがアガっていたさ。」
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エマ |
「失礼します。」
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レコア |
「エマ中尉、レートは大丈夫だったみたいね。」
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エマ |
「ありがとう。
リャンピンが希望だけど、今は持ち合わせがない身だから。
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大尉は、まだ私をイカサマ師だとお思いですか?」
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クワトロ |
「それはそうだ、
君のご両親が手積みでやっておられるならば、好牌を
取られているようなものだからな。
君が雀熊に戻る可能性はある。」
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エマ |
「それは現実的な見方ですね。」
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クワトロ |
「そうだ。
今も両親の点棒を盾に敵が追っかけリーチをかけてきて、その敵と戦ってきた少年がここにいる。」
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エマ |
「それを聞いてきたんです。
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両親はレートの高い雀士たちです。
私の打ち方を理解して、許してくれると思います。」
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カミーユ |
「いいですね。素敵だ・・・。
エマ中尉のように、クリーンな麻雀をやっていらっしゃる雀士を親に持てて。」
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エマ |
「でも、カミーユだって、御両親は・・・。」
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カミーユ |
「あんなの、雀士じゃありません。
あんなの・・・。」
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レコア |
「カミーユ!」
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カミーユ |
「いけませんか?こんなこと言って。
でもね、僕は両親にコンビ打ちをやってほしかったんですよ!
そう言っちゃいけないんですか?子供が!
父は前からダマテンを作っていたし・・・、
母は父がテンパっていたって、手なりで満足しちゃって、父の捨て牌に見向きもしなかった。
面前の和了って、そんなに大事なんですか?
立直だ一発だって、そんなことじゃないんです。
場の流れを無視されちゃたまんないんですよ!」
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クワトロ |
「良く分かる話だが・・・。」
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カミーユ |
「飛んだ両親のことは言うなと言うんですか!」
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クワトロ |
「そうだ。
そして次の半荘のための資金作りをしなければならない。」
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カミーユ |
「僕にそんな軍資金があるわけないでしょう。」
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クワトロ |
「あるな。」
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カミーユ |
「大尉は僕の何なんです。
目の前で二度も親を飛ばされた僕に、何かを言える権利を持つ人なんていやしませんよ。」
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クワトロ |
「シャア・アズナブルという人のことを知ってるかな?」
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カミーユ |
「尊敬してますよ。
あの人は両親の負け金を一身に背負ってザビ家を飛ばそうとした人ですから。
でも、オーラスに脳死状態で立直してハコ割れしたバカな雀士です。」
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クワトロ |
「正確な評論だな(怒)。
が、その言葉からすると、その人の言葉なら聞けそうだな。」
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レコア |
「クワトロ大尉・・・。」
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カミーユ |
「会えるわけないでしょう!」
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クワトロ |
「その人は、カミーユ君の立場とよく似ている。
彼は最終形の立直をツモアガることがトップをマクる上で一番重要なことではないのかと感じたのだ。」
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カミーユ |
「聞けませんね。
僕にとっては立直も一発も関係ないって言ったでしょ!
オナテン同士のシャボ待ちの中で飛んでいったバカな両親です。
でもね、僕にとっては親だったんですよ!!」
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クワトロ |
「カミーユ君!」
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レコア |
「ハコ割れ雀士を持ち出して説得するなんて、上手じゃありませんね。」
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クワトロ |
「そうだな。
俗人は、ついつい自分はこういう雀勇伝を知っていると言いたくなってしまう、イヤな癖があるのさ。」
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