司馬先生 |
「ロンしたくない,雀師だっているんだ世の中には!!」
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石川先生 |
「違う!!」
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司馬先生 |
「違わない!!」
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石川先生 |
「雀師は第一に自分の上がりを考えるべきだ!」
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司馬先生 |
「エセ雀師が!」
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いきり立った司馬は,石川に詰め寄ろうとした.しかし,立ち上がった弾みに自らの上がり牌を倒しさらしてしまった.
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司馬先生 |
「あっ!?」
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(効果音)
ディンドーーーン,ディーーン,ディドディーーン♪
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倒れた司馬の手牌の端には,いやらしく,そして申し訳なさそうに,一枚だけ南の牌がさらされていた.
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石川先生 |
「南だとぉーーーーー」
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石川は素早く卓を見渡した.一枚,二枚,そして三枚! 何の事は無い,当たり牌は既に場に出きっていたのである.先ほどリーチかけた司馬は,紛れも無くカラテンリーチだった.
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中川部長 |
「いいねぇ,いいねぇ,チョンボ・チョンボ・バップ!! いいねぇ,いいなぁ!!」
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下家の中川部長が追い討ちをかけた.以前身代わり放銃をしてもらったことなど,すっかり忘れてしまっているような口調であった.
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司馬先生 |
「・・・上がりますよ」
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中川部長 |
「いや,十中八九というか,だめだろう」
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石川先生 |
「みんなに話してくる!!」
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司馬の失敗が嬉しくて仕方がない石川が,麻雀をほっぽりだして駆け出そうとした.
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司馬先生 |
「余計な事するな!!」
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石川の胸ぐらをつかみ,強がりを言い放つ司馬だが,その目にはうっすらと懇願の涙が浮かんでいた.
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石川先生 |
「言われちゃまずいのか?」
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司馬先生 |
「・・・・・・」
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ごめんの一言がいえなかった司馬は,そこにたたずみ,院内に噂が広まるのをただ見守るしかなかった.
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